Inaugural Season & 40th Anniversary
サマリンの地で新たな歴史を刻み始めたAviators。「Inaugural season」という言葉が至る所に登場するが、ある日の試合前、今年からAviatorsのヘルスケアに参画するメジャー・トレーナーズの創業40周年を祝う表示が。両者にとって記念すべき年であることを、観客にもはっきりアピールあたりがアメリカらしいワンシーンだ。
信頼は一日にしてならず
メジャー・トレーナーズUSAの代表であり、今シーズンからLas Vegas Aviatorsのトレーナーズルームで選手・スタッフのサポートを手がける河野智和氏。メジャー・トレーナーズに入社して30余年、国内外で数多くの現場を経験してきたキャリアとスキルを持ちながら、誰とでもフラットに接するスタンスは広く愛されており、インタビュー中も「Hi! TOMO!」と選手やスタッフ達が冷やかしながら通り過ぎていく。チームのスケジュールに合わせて生活パターンが変わるため、異国の地で毎日ミッションを遂行するのは苦労の連続のはずだが、そんな様子はおくびにも出さずにプロのトレーナーとしての業務を着実に行っているからだろう、今回インタビューを行ったチーム関係者の全員が、河野氏に対する信頼を口にしていたのが印象的だった。
36年目のシーズン
メジャー・トレーナーズ・岡崎智美氏のインタビューに答えるダン・ローガン氏は1984年(ロサンゼルス・オリンピックが開催された年)からラスベガスの地で球団経営に関わり、今年で36回目のシーズンを迎える「球団経営のプロフェッショナル」だ。一貫して経営畑を歩んだ彼が球団社長に就任したのは2000年。2013年にはサマリンの地に球場を移転すべく立ち上げられたLLCのCOOに就任し、Las Vegas Ballparkの誕生に大きく貢献してきた。生き馬の目を抜くようなプロスポーツビジネスの現場で生き抜いてきた人らしく、契約するメジャー球団も目まぐるしく変わる中でもぶれることなく、このBallparkを実現させただけに、インタビュー中の表情には自信がみなぎっていた。
変わるもの、変わらないもの
たゆみなく進化を続けるこの国の「国技」らしく、11年ぶりの訪問者にとっては新たな驚きの連続だったLas Vegas Ballpark。しかしどんなに時間が経っても変わらないものもある。それは試合前のNational Anthem Timeだ。多国籍化、そして多様化がどんなに進んでも変わらず行われるこのセレモニーだけは、これからもずっと、同じようにあり続けるはずだ。
アイポイント
このボールパークは全ての客席からグランドが見渡せるように設計されていて、スタンドの傾斜も緩く設計されているため、移動も楽に行うことができる。外野席には屋根がないので、フィールド内と変わらない開放感を味わうことができる。どこにいてもフィールドの動きを見渡せるのは、プランニング段階で「全ての観客に見えるフィールド」を意図したからではないだろうか。
リラックスと集中と
試合前練習は、太陽が傾き始める頃にやっと始まる。砂漠の気候で太陽が照りつける時間にやるよりも、短時間で集中してやる、ということなのだろう。とはいえ摂氏35度を超える環境で「無理無駄なことはしない」のがアメリカ流だ。選手はTシャツ+ショーツにキャップという出で立ちで現れ、打撃練習の合間を縫って守備練習を行う。
バットボーイではなく
Las Vegas Ballparkでは、選手が打席に残したバットの回収をバットボーイではなくバッドドッグが行う。彼のワーキングタイムは1回から3回までに限定されているが、打ち合いとなると彼の出番も当然、増える。しかし一度のミスもなく、打席とダグアウトを往復する様は観客を楽しませるだけでなく、試合時間の短縮にもつながっているような気がした。
もうひとつの特等席
トップレベルのスイートからフィールドの臨場感が感じられる客席まで、様々なシートが用意されているLas Vegas Ballparkだが、夜になっても熱が冷めない砂漠の気候を味方にするべく?ライト側後方ブルペン横に設けられたのがプールだ。プールの底には丸椅子が固定されていて、それに腰掛けて試合の行方を見守ることも可能だ。

<小城プロフィール>
小城崇史(Takafumi Kojo)
写真家。国内外のスポーツ取材を数多く手がけ、中でもアメリカ・MLBは20世紀から21世紀にかけて13年の取材キャリアを持ち、雑誌・ウェブサイト等に写真を発表している。近年は写真だけでなく、出版物のプロデュースやプロダクトアドバイザーなども手がけるマルチロールプレイヤー。サッカーJ2・FC町田ゼルビアオフィシャルフォトグラファー、公益社団法人日本写真家協会(JPS)一般社団法人日本スポーツプレス協会(AJPS)会員、筑波大学芸術系非常勤講師。