NSCA(National Strength & Conditioning Asociation)はトレーニング分野に携わる人々に情報と活動の場を与えることを目的とした会員制の非営利教育団体です。アメリカで1978年に設立され現在40ヶ国10000人以上の組織に発展しています。
この分野の専門職を確立・養成し、その社会的地位を向上させることに力を注ぎ、資格認定試験(CSCS,CPT)を行なっています。 これらの資格はNSCA(全米資格試験認定委員会)に正式に認可されておりそれなりのレベルと権威が保証されています。
NSCAジャパンはNSCAの日本支部として1991年にスタートしました。会員数は1500名を超え、2000年4月からは特定非営利活動法人(NPO)の認可を受けました。どなたでも年会費を事務局に納めれば入会することができます。会員には以下の3種類があります。
●一般会員 年会費12,000円
●学生会員 年会費10,000円
●英文購読会員 年会費17,000円
【会員特典】
●年10刊の機関誌『NSCAジャパンジャーナル』が届けられ、他のトレーニング関連の書籍では なかなかお目にかかれない実践的かつ深く掘り下げられた情報を得ることができます。
●NSCAジャパンが開催するセミナー,ワークショップ,総会に会員価格で出席できます。
●資格認定試験(CSCS,CPT)が受けられます。
●NSCAの教材・書籍が購入できます。
NSCAジャパンはホームページを開設しています。詳細を知りたい方は下記までアクセスしてください。 http://www.nsca-japan.or.jp/
CSCSとは
Certified Strength & Conditioning Specialistの略です。主としてスポーツ選手に対し、競技力向上を目的とした安全かつ効果的なストレングス・トレーニング及びコンディショニング・プログラムを計画・実践する専門職です。1985年の試験開始以来、毎年全米及び日本を含む世界300ヵ所以上で試験が行なわれ、現在7000名以上のCSCSがスポーツ関連の現場で活動しています。日本では1993年から試験が始まりました。'98年以前は日本での試験も英語でした。ちなみに試験の合格率は日本語試験元年の1999年は61%(52名合格/85名受験)、2000年は67%(74名合格/109名受験)で、実技試験のあった2006年は27%(41名合格/152名受験)でした。
CSCSへの道
CSCSの試験を受けるには、まず以下の条件をすべて満たす必要があります。
●NSCAジャパン会員
●4年制大学卒業者及び卒業見込み者(学部不問)
●NSCAの認める団体の(心肺蘇生法)とAEDの両資格保持者
・日本赤十字社 (救急法救急員)
・国際救命救急協会 (CPR BASIC+AED以上のセミナー)
・日本ライフセービング協会 (CPR)
・日本救急蘇生普及協会 (ベーシックファーストエイドプロバイダー以上の資格)
受験をしようと思ったら、まずは事務局から出願書類を取り寄せる必要があります。出願期間は試験の3カ月ほど前からの約2カ月間で、6月~8月といったところでしょう。その際に受験料89,250円(受験前講座+筆記試験)を納入します。日本では関東・関西の2カ所で同時に試験が行なわれるので、希望する会場を申し込みます。出願には大学の卒業証明書などいろいろな書類が必要になりますから、期限ぎりぎりになってあわてないよう早めに準備しましょう。
この期間にCSCS受験対策講座がやはり関東・関西の2カ所で開かれます。受験者は10000円(テキスト代別途)を負担しなければなりません。以前は希望者のみの受講でしたが、2005年からは原則的に必須受講となりました。ただし、再受験で、以前に基礎科学セクションもしくは応用実践セクションのいずれかに合格している場合は受講の義務はありません。受験書類がアメリカのNSCA本部で受理されると受験票が送付されます。教材にもそれなりの出費を覚悟しなけばなりません。CSCS関連には以下のものが用意されています。試験に関する情報は限られていので、備えあれば憂いなしということで両方購入した方は多いことでしょう。受験対策講座でも毎年テキストとして使用されているようです。『ストレングストレーニング&コンディショニング』はこの分野に携わっている人なら受験抜きにして手元に置きたい書籍です。
●『ストレングストレーニング&コンディショニング第2版』 11,550円
●『CSCS模擬問題集』 4,200円 (DVD付は6,300円)
●『CSCS認定試験受験ガイドブック』 2,100円
●『ストレングス&コンディショニング ワークブック』 7,875円
●『エクササイズテクニック・チェックリスト(テキスト+ビデオ)』9,975円
いよいよ筆記試験当日です。試験は基礎科学80問,実践応用110問の4択マークシート方式で、制限時間はそれぞれ90分と150分。出題分野はNSCAジャパンのHP上で確認できます。合格ラインは70%。基礎科学,実践応用それぞれ70%をクリアしなければならず、片方でも下回ると不合格です。全問190のうち50はミスが許されると考えるとすこしは気が楽です。問題用紙はすべて回収されるので過去問題が出回ることはありません。試験終了時、受験者は多かれ少なかれショックを受けているようです。
プレッシャーから開放されて結果を待つこと2カ月、NSCAジャパンから筆記試験結果の通知が届きます。同封のスコアシートには分野ごとに正解数が示され、筆記試験合格者には実技試験の案内が同封されています。2006年のみ行われた実技試験は約3ヵ月後、ウイダートレーニングラボにて実施されました。当日は集合後に試験の説明が行われます。4~5名の検定員のチェックを受けながらハングクリーン(3REP)→バックスクワット(5REP)→ベンチプレス(5REP)とこなすという内容。挙上重量が自己申告なので精神的な余裕はありました。とにかくフォーム重視です。
試験に合格すればいよいよCSCSとなります。しかし合格通知を受け取った喜びもつかの間、CSCSには資格を維持する長い旅が待ち受けています。新しい情報を吸収し、つねに先へ先へと進んでいかなければなりません。
CSCSの維持
資格を維持するためには3年間で決められたCEU(継続教育単位:Continuing Education Unit)を取得しなければなりません。CEUは下記の四つのカテゴリーに分かれていてそのなかのふたつ以上から取得しなければならず、それぞれで取得できる最大CEUが定められています。よって、たとえばNSCAの総会,セミナーなど(カテゴリーA)に参加しまくってそれだけでCEUを満たすということはできません。
●カテゴリーA:NSCAジャパンのセミナー,ワークショップ,総会などへの出席
●カテゴリーB:上記に講師,パネリストとして参加、出版、委員会業務、ジャーナルのCEUクイズに解答
●カテゴリーC:研修への参加、心肺蘇生法(CPR)に再認定
●カテゴリーD:他団体の講座を受講、自己啓発、NSCAの他の資格に合格、現在所有の資格に再合格
CEUの取得には費用が必要です。たとえば総会の出席には15,750円、CEUクイズは毎回1,050円、心肺蘇生法の講習は10000円前後といったところでしょうか。これらとは別にNSCAジャパンに管理費を毎年3,150円納めなければなりません。さらにCPTとかけもちしている場合、CEUはどちらの資格にもカウントされますが、年間管理費3,150円は別途必要です。NATA・ATCにたずねてみたところ、トータルではCSCSと同じくらい資格の維持に出費がかさむようです。トレーナー関連の資格はとにかくお金がかかるのです。
CSCSにまつわる気になる話題
■実技試験について
NSCAの資格には実技試験、実務研修がないことが問題だと考えられていました。2006年にいよいよ実技試験が導入され、資格に対する評価が上がることが期待されました。しかし残念ながらその年限りで廃止。この背景には、NSCAの各国支部で実技試験ありの試験形態を統一できないこと、そういう状況のまま実技試験を継続すると資格そのもののグレードが下がるという事情があったようです。
■アメリカ4大プロスポーツのストレングスコーチのなかでCSCSが占める割合
2000年時点では約半数だったようですが、2006年時点の報告では野球100%、バスケ70%、アメフト,アイスホッケー60%となっています。また、大学スポーツのDivision12003~2004年シーズンでは全種目優勝チームの78%がCSCSを持つストレングスコーチを雇っていたということです。
■CSCSは大卒が条件なのにCPTはそうではない理由
CSCSのほうがより限定された専門性の高い資格だからだそうです。資格試験開始当時、まずは大学関係者にこの資格を受け入れられたかった、資格の信頼性を上げるためにはやはり4年制大学を基準にするのが手っとり早かった、ということが理由としてあげられるそうです。専門学校卒者以下にCSCSの門戸が開かれる可能性はいまのところゼロといっていいでしょう。
CPTとは
Certified Personal Trainerの略です。個人の特性や目的、ライフスタイルに合わせたトレーニングプログラムの作成およびマンツーマンの指導を行なう専門職です。その指導対象はスポーツ選手から中高年層や生活習慣病などの危険因子を持つ人々まで広範囲にわたるため、トレーニング知識に加え、医学的知識、また動機づけの点において高度な知識と能力が要求されます。アメリカでは1993年、日本では1995年から試験が実施されており、CSCSとは異なり当初から日本語で受験できました。日本人CPTは2000年度試験終了時点で273名でした。また、試験の合格率は1999年28%(56名合格/198名受験)2000年45%(106名合格/232名受験)でした。
CPTへの道
CSCSと重複する部分がかなりあります。
●NSCAジャパン会員
●NSCAの認める団体のCPR(心肺蘇生法)資格保持者
・日本赤十字社 救急員養成講習会のCPR講習内容に準ずるもの
・国際救命救急協会 C.P.R.Basic 以上
・日本ライフセービング協会
・日本救急蘇生普及協会 初級救急士以上
・EMPジャパン スポーツ医学MFAのみ
・L.S.F.A First Aider 以上
これらをクリアしたうえで事務局から出願書類を取り寄せます。出願期間は試験の3ヶ月ほど前からの約2ヶ月間で6月~8月といったところでしょう。その際に受験料45000円を納入します。日本では関東・関西の2ヶ所で同時に試験が行なわれるので、希望する会場を申し込みます。出願には大学の卒業証明書などいろいろな書類が必要になりますから、 期限ぎりぎりになってあわてないよう早め早めに準備しましょう。
この期間にCPT受験対策講座がやはり関東・関西の2ヶ所で開かれますが、受講希望者はさらに15000円(テキスト代別途5000円)を負担しなければなりません。受験書類がアメリカのNSCA本部に受理されると受験票が届きます。
教材にもそれなりの出費を覚悟しなけばなりません。CPT関連には以下のものが用意されています。『CPT受験ハンドブック』は受験対策講座でテキストとして使用されているようです。『ストレングストレーニング&コンディショニング』はこの分野に携わっている人なら受験抜きにして手元に置きたい書籍です。
●『ストレングストレーニング&コンディショニング』 12600円
●『CPT模擬問題集』 4000円
●『CPT受験ハンドブック』 2100円
●『NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識』 12,600円
いよいよ受験当日です。試験は140問の4択マークシート方式で制限時間は3時間。出題分野は会員に送られるパンフレットであらかじめ告知されています。合格ラインは70%です。試験後待つこと2ヵ月、NSCAジャパンから試験結果の通知が届きます。スコアシートには各分野ごとに9/15といった形で正解数が示され、合格者には英語の資格認定証、登録更新制度の案内が同封されています。喜びもつかの間、CPTには資格を維持する長い旅が待ち受けています。 新しい情報を吸収し、つねに先へ先へと進んでいかなければなりません。
CPTの維持
資格を維持するためには3年間で決められたCEU(継続教育単位:Continuing Education Unit)を取得しなければなりません。 CEUは下記の四つのカテゴリーに分かれていてその内のふたつ以上から取得しなければならず、それぞれで取得できる最大CEUが定められています。
●カテゴリーA:NSCAジャパンのセミナー,ワークショップ,総会などへの出席
●カテゴリーB:上記に講師,パネリストとして参加、出版、委員会業務、ジャーナルのCEUクイズに解答
●カテゴリーC:研修への参加、心肺蘇生法(CPR)に再認定
●カテゴリーD:他団体の講座を受講、自己啓発、NSCAの他の資格に合格、現在所有の資格に再合格
CEUの取得に費用が必要です。たとえば総会の出席に15000円、CEUクイズは毎回1000円、心肺蘇生法の講習は10000円前後といったところでしょうか。これらとは別にNSCAジャパンに管理費を毎年3000円納めなければなりません。CSCSとかけもちしている場合CEUはどちらの資格にもカウントされますが、年間管理費3000円が別途必要です。
Road to CSCS
筆者(水野)がCSCSの存在を知ったのは学生のときのことです。将来的にコンディショニングを専門にすることを志しており、その目標への第一歩ということで受験を決意しました。NSCA関連の資格を持っている方が身近に数名いらっしゃったので試験の様子を尋ねてみると、「問題数がとにかく多くて自分の回答が正解なのかどうかの見当もつけられずに時間が過ぎてしまう」ということでした。
とりあえずはNSCAへの入会を済ませます。すぐにジャーナルが手元に届き、そこでCSCS受験対策講座の存在を知り流れのままに申し込みをすることになります。これに臨むにあたり用意するのがNSCAのガイドラインともいえる『ストレングストレーニング&コンディショニング』。最初手にしたときは本のぶ厚さに驚きました。とくに運動生理学関連のページは内容が堅苦しく、覚えることも多くて気が遠くなるようでした。
講座の内容も難しかったです。運動生理学や栄養学関連では話をメモするので精一杯、後半になりバイオメカニクスやトレーニングの話になったところでやっと学校の授業で聞いたことのある内容が出てきました。この項目がでてきたところで講師から以下の3点について尋ねられます。
①現在トレーニングを定期的に行っているか
②実際にプログラムデザインをしてトレーニングをしているか
③ガイドラインをひととおり読解したか
受講者の大半は①には挙手していましたが、②③はごくわずか。私もそうです。この光景をみて講師はこうおっしゃりました。「三つとも手が挙がらなかった人は本番でかなり苦戦することが予想されます」。そのとき私はそれでもなんとかなると思っていましたが、のちに私自身がこの言葉の重みに気付かされることになります。
2004年試験
知人からエクササイズテクニックで使用されるビデオを借りて2004年の試験に臨みました。結果をさきに申し上げますと、基礎科学セクションは合格、応用実践セクションは不合格でした。基礎科学セクションはガイドラインどおりという印象で、ひととおり読解していれば対応可能でした。応用実践セクションはビデオ問題とエクササイズテクニック、私はプログラムデザインの出来が極端に悪くそれが致命的でした。
2005年試験
基礎科学セクションはすでに合格していたので応用実践セクションのみの受験となりました。来年の試験からは実技が導入予定。なにがなんでも今年中に受からねばという思いでした。自己採点では合格ラインぎりぎりでしたが、1~2カ月後に送られてきた合否通知を開封するとなんと不合格・・・スコアシートを確認するとあと1問正解なら合格だったようです。これはショックでした。
2006年試験
今回落ちたらもう無資格でトレーナー活動しようか、そんな心の声が頭の片隅にちらほら。しかしそれに屈することなく試験前日からの2日間はかなり追い込みをかけました。試験中は集中しすぎて気分が悪くなる始末・・・終了後は歩くのもしんどいほどに疲れていました。いま思えば、1回目や2回目にこのような緊張感はまったくなく、なんとか受かるだろうという甘い気持ちがどこかにありました。結果は合格。通知が届いたときは嬉しさ以上に安堵感が大きかったです。
2006年実技試験に向けて
※実技試験が行われたのはこの年のみです。
私は実技試験までの日数から逆算して練習計画を立てました。「実技なんて楽勝」という考えをお持ちの方はいらっしゃると思います。私のなかにもそういう気持ちがなかったわけではないのですが、もう絶対に落ちたくないという思いから週3~4日のペースでウイダートレーニングラボに通って実技試験の練習を行いました。試験はけっこう細かい部分までチェックされます。クイックリフトにおけるトリプルエクステンション、セカンドプルでの股関節の伸展、キャッチなどの動作をすぐに実演できない場合は要練習ですね。2007年以降に受験する方は試験項目としての練習は必要ありませんが、実演することで頭でも理解がしやすくなります。座学ばかりではなく、実際にトレーニングをしながらガイドラインの知識を吸収していただきたいものです。
アドバイス
CSCS筆記試験ではガイドラインの内容を頭に入れると同時にエクササイズ動作を考察する能力が重要だと感じました。具体的に述べると‥
●代償運動を見抜ける
●トルクとなる関節がどのような動きをしているのかを理解したうえで動員される筋の種類がわかる
●筋の作用を関節の構造と結び付けて考察できる
といったところでしょうか。もちろん直感的にこういうものを感じることに長けている人は上手に要領を得て対応できるかもしれません。しかし、そうでない人(筆者も)はやはりこういったことを意識しながら、自分の知識と技術を向上させて受験することをお勧めします。
弊社スタッフ・水野 慎一郎
筆者(大木)がNSCA-CPTの試験を受験した年は、CPT試験の1カ月前に日本体育協会のAT(アスレティックトレーナー)の試験がありました。当初はまずはATの試験に全力を注ぎ込み、残りの短期間でCPT試験の準備をすると決めていました。いざATの試験が終わりひと息入れて勉強を再開しようとしたのですが・・・私はATの試験で燃え尽きてしまっていました。なにもしないまま時間は過ぎついに試験日前日に。最後の悪あがきとしてテキストをざっと目を通し、翌日に備えて早めに就寝しました。
CPTの試験は以下の4分野に分かれています。
1.クライアントに対する面談と評価
2.プログラムプランニング
3.エクササイズテクニック
4.緊急時の手順、法的問題安全性
試験は四つの選択肢から一つの解答を選ぶマークシート方式です。時間は3時間、問題数は140、そのうち40がビデオ問題となっています。試験を受けた感想としては、問題のなかの引っかけに惑わされなければ決して難しいものではありません。私はCPTの対策としてはほとんど勉強していませんでしたが、ATの試験のために勉強したことと自身のトレーニングの経験によりなんとか試験をパスすることができました。とくに上記2と3にかんしては、自身のトレーニング経験が活きていたと思います。1と4はテキストどおりなので、分かりやすいようにまとめておくことをお勧めします。もっともやっかいに感じたのが4でした。問題は引っかけのオンパレードで、それに惑わされずもっとも適切な答えを選択できるかがカギとなります。
私が受験したときは筆記試験の後に実技試験があったのでそのことも述べようと思っていましたが、なんと2007年から廃止。ただ、テキストを読み勉強するだけでなく、自分で実際にトレーニングし、トレーニングのポイント、筋の作用など体に覚えさせていくことで、筆記試験の合格がより近づくのではないかと私は考えています。
弊社スタッフ・大木 智裕