CSCS受験奮闘記(99年版)
其の1 私の苦労はいったい…
私(片場)はトレーニング指導の資格は何かないかとその分野の雑誌を手当たり次第にチェックしていたところ、 NSCAなる団体の存在を知りました。トレーナーにかかわりのある資格は数あれど、 トレーニング関連ではNSCAに勝るものはこれといって見あたらなかったので、 CSCSに挑戦しようと決めました。 それが’98年のことです。 NSCAテキストともいうべき『ストレングストレーニング&コンディショニング(以下S&C)』は まだ日本語版が出ておらず、 英語版を8000円弱で購入してびっくり。 私はさして英語が得意でないうえにに医学英和辞典でなければ出ていない単語の嵐! 1日数ページ読み進めるのが精一杯で、これでは一冊読破するだけで2年はかかってしまいます。 さらに内容を頭の中に叩き込むとなると何年かかるのだろうか? 現在は廃刊になっている『CSCS受験ハンドブック』と、 CPT獲得も視野に入れて『CPT受験ハンドブック』も同時に購入しましたが、 とてもではないがそれを読んでいる余裕などありません。 ここまでしてCSCSになる価値が果たしてあるのだろうか、そう考えながらも、 とにかく私は1年数カ月闘い続けました。 '98年暮れに『S&C』日本語版が出版されるというしらせがありました。 私はこれにより英語の勉強がはかどると大喜びで予約したのですが、 ある上司が「試験も日本語になるかもね」と洩らしたのが どうも気になります。 日本語版を入手し、英語版の読解が半分あたりまで進んだ’99年春、上司の予言はみごと的中しました。 今年度から日本語で試験実施! なんということか。 なぜ『S&C』の日本語版発売と試験が日本語になるという通知を同時におこなわないのか。 英語版をすこしでも売りさばこうという悪意を感じました。 私は日本語版を参照しながら英語版で勉強してきたのがあまりにばかばかしくて放心状態に陥り、 1カ月間勉強をする気になれませんでした。 英語版『S&C』はその後あるATCの手に渡り、大いに役に立っていることと思います。
其の2 気をとりなおして
試験まで半年をきった99年のある日、それまでその年に受験するとは考えていなかったのですが、 残り短い期間で『S&C』をざっと読んでとりあえず受験はしようと思いたちました。 なにしろこれまで英語を読解するだけで内容はまるで覚えていませんから、 受験勉強としてはゼロからのスタートになります。 ただ、自分にはそれまでのトレーニング経験とそのための情報収集で得た知識だけはありました。 『CSCS模擬問題集』を購入しトライしましたが、合格ラインの70%ぎりぎりというところでしょうか。 問題自体は『S&C』に忠実で何のひねりもありません。 本番がこんなに素直だとは到底思えませんが…? 実技がないだけに、なにかあるに決まっています。 7月の受験対策講座も受講しました。 テキストは前述の模擬問題集でした。 '01年の講座では『S&C』を用いているようですが。 問題集では各問「『S&C』の何ページを見よ」と明記されているにもかかわらず 講師が問題集の解説を始めたときは 「オイオイ」と思いましたが、 後半になって過去の出題傾向や質問のクセについて話してくれたのでホッとしました。 試験直前の'99年9月上旬、私は『S&C』の2度目の復習を大急ぎで終え、 できることはすべてやって本番を待つだけとなりました。
其の3 ショック状態
試験会場はNSCA試験の定番、青山学院大学です。 受験者はやはりトレーニング関係者だけあって、立派な体格の人ばかりです。 ちなみに私のとなりはこの業界ではあまりに有名な某先生でした (ヒント:やり投げ⇒ボディビル⇒某大学トレーニング施設)。 さて、基礎科学100問実践応用90問の試験は、とにかく時間との戦いでした。 単純計算で1問1分でもいけるのですが、引っかかる問題があると1分などすぐ超えてしまいます。 肝心の内容ですが…『S&C』は?『模擬問題集』は?受験対策講座は?そんなことどこかに出ていたっけ? 年によって差はあるのでしょうが、エクササイズ関連のことばかりひどく突っ込んだ内容で、 基礎科学と実践応用の明確な線引きが感じられませんでした。 広くバランスよく要点を押さえて覚えてきたことなどすべて霧散! しかも、元々英語の問題を和訳しているということが影響しているのかもしれませんが、 4択中明らかなまちがいはひとつだけで、残りからは正しいなかでも「もっとも正しいもの」を 選ばなければならないというような こじつけっぽいケースが多々ありました。 自分の知識を発揮しているというよりは、問題が間接的に意図するところを読み取るというような、 そういう判断ばかりに精神力を費やした、そう感じたのは私だけでしょうか…? 試験終了時あたりを見回すと、ただならぬ問題に多くの受験者が精神的ダメージを受けていたようです。
其の4 結果は…
試験を終えて、ふと思いました。 其の2で述べたように、これまでのトレーニング経験と情報収集で得た知識が 合否の最終防衛ラインになるのではないかと。 なにしろエクササイズ実施方法ばかりひどく突っ込んだ内容ですから、 額に血管を浮き上がらせてバーベルと格闘した経験のない人にとって あの問題はとてつもなく難しく感じられたに違いありません。 受験対策で覚えたことよりも、 トレーニング雑誌のどこかで目にしたことばかりが出題されていたように感じます。 見方を変えるなら、問題の中に数々の引っかけがあっても、 生のトレーニング知識・経験があれば190問中ミスを50には抑えられるということです。 そういう意味では、合格ライン70%という点も含めて、この試験はよくできていると思いました。 自分の感触としてはミスはどんなに多くても50、よほどのことがない限り不合格はないというところでしたが、 予想どおりある程度の余裕をもって合格することができました。 自分の名前が入った認定証を手にしたときと、 NSCAジャーナルに名前が掲載された時の気分はやはり格別でしたね。
其の5 CSCSからの助言
CSCSにもいろいろな人がいます。 試験がまだ英語だった時代に苦労して取得したにもかかわらず、CSCSを更新しない人もいるようです。 ストレングスの分野の職業に興味のある方はまずNSCAに入会し、 『NSCAジャーナル』のインタビューのコーナーと会員名簿をしっかりチェックしてください。 そして総会などに出席してネットワークを広げてください。 CSCSになるのはそれからでも遅くはありません。
CSCSのCでコンディショニングという語が使われているものの、 実際にはかなりストレングス寄りの資格です。 ストレングスの分野に力を入れて活動しようと思っている、 ある程度の収入が見込める人はぜひCSCSを取得してください。 個人で体当たりでストレングスコーチの就職口を探そうというような気合いの入った人なら、 最近はCSCSの認知度も少しずつ上がってきていますから、 思わぬところから声がかかることもあるようです。 そうでない人、たとえばストレングス以外でも活動範囲の広い人などは、 CSCSを取得・維持する経費と現時点ではスペシャリストの肩書きの域を出ないという点を量りにかけて、 個人個人で判断するほかありません。 現状ではストレングスコーチをするのにCSCSが絶対条件というわけではないし、 資格がなくても良い指導をする人はたくさんいます。 ただしこの点だけは強調しておきたいのですが、 NSCA資格はトレーニング指導者としての最低水準はクリアしているという証明になります。 世の中には首を傾げたくなる指導者がいるもので、 私の知る限りそのような人がCSCSの試験に合格することはまずあり得ません。
CSCSを今後目指そうと思っている方は、まず『S&C』で基礎をしっかりおさえたうえで そこからの+αを自分の中に蓄積していってください。 バーベルやダンベルに触る機会を多く持ち、並行してトレーニング雑誌によく目を通してください。 定番はトレーニングジャーナルやコーチングクリニックですが、 ボディビル関連のものも軽視してはなりません。 各種講習会で知識を得ることもプラスになります。 もっとも重要なのはトレーニングをする動機です。 ストレングス・トレーニングは一般人の健康目的のトレーニングとは違いますよね? レベルが上がれば方法は色々あるにしても、 スタート地点にあるのは顔を真っ赤にしてバーベルと格闘する姿勢です。 自分が強く大きくなり、プレーが変わるからがんばれるのです。 指導者自身に現役選手としての経験が乏しい、 あるいは現役時代にストレングス・トレーニングの経験が乏しい、 こういったことはひじょうに大きなハンディキャップになります。 もしあなたがそれに当てはまるがストレングスやコンディショニングの分野に進みたいというのであれば、 明日からでもジムに通い汗を流してください。 規模が大きいことで知られる某大学トレーニングセンターのアシスタント・ストレングスコーチたちは 選手たちへの指導が終わると自分のトレーニングを黙々と始めるそうですよ。