《プロ野球トレーナー リポート》 by大澤省吾
今年('04年)は1シーズンの期間限定ではありますがプロ野球(在阪球団)トレーナーという『日本最高峰のスポーツトレーナー』を体感することができました。オールスター前は1軍、オールスター後は2軍と環境や立場が違う両方のトレーナーを任され、貴重な経験になりました。その様子と感じたことをご報告いたします。
2月キャンプイン
若手、ベテランが入り混じりいっせいにスタート。
若手選手は自分をいじめぬく場となり、全体練習+個人練習とハードな1ヵ月となります。
ベテラン(主力)選手は自分なりの調整を行うケースが多かったです。
徐々に体を慣らしていく選手、シーズン中やシーズンオフはウェイトを行うがキャンプ期間はまったく行わない選手、シーズン中と変わらない調整を行う選手、まったく人それぞれで、経験により得た自分なりの調整法を持っています。
彼らの自分を認識・管理する能力の高さには驚かされました。3月オープン戦
前半は若手中心で1軍の生き残りをかけた戦いが行われ、後半戦から主力選手も試合に参加していきます。
昨日までいっしょに戦っていた選手がいきなり2軍に行くといったことが当たり前で、「これが現実なのか」とプロの厳しさを教えられました。4月開幕
シーズンに入り、キャンプやオープン戦では見えなかった部分が見えてきました。
食事やサプリメントなど栄養面はもちろん、毎日の調整として練習前にウェイトを行う主力選手が多くみられました。
ある選手は「ウェイトを続けていかないと1年間もたない」と言っていました。
そしてあまり試合出場のない選手が試合後にバッティング練習やウェイトにより体を追い込んでいる姿から、私は『プロ意識』を感じ取りました。
本人曰く「試合に出場していないから当たり前」ということで、こういう選手が一流になっていくのだろうと思います。
また気持ちの切り替えの早さもさすがプロフェッショナル。
ある投手は登板前には他の選手とじゃれ合って冗談ばかり言っているのに、自分の名前がコールされていざマウンドに上がる瞬間となると鬼のような形相になっていました。
そして自分の役割を果たしてベンチ裏に引きあげてきた時には安らかな表情に戻っていました。
こういったオン・オフの切り替えのうまさは140試合という長丁場を戦い抜くための秘訣なのでしょう。
しかし、負けの許されない大事な一戦の日は練習時から緊張感があり、試合前に治療をする時は私もいつも以上に緊張してしまいました。
そういう試合が今季前半戦には1試合だけありました。トレーナーの仕事
トレーナーの仕事は選手の治療はもとより練習中試合中のケガの対処、ドリンクの用意、病院への連絡付きそいなどがあります。
そのなかでなにより難しかったのが監督・コーチと選手とのパイプ役となることでした。
怪我の状況やコンディションを把握し、その日のゲームに出場できるかどうかの判断をして、監督・コーチにケガの状況をどのように伝え、練習や試合をどう配慮してもらえるか?
そこには監督・コーチの意向や選手の主張がからみ、それらをどうかみ砕き橋渡しとなっていけるかが鍵になります。最近ではドーム球場が多くなりましたが、同じドーム球場でも場所により体感温度や空気の薄さが異なります。
球場や季節により準備しなければならないものが変化します。
携帯用酸素も球場によっては必要になります。
芝もまた大きなポイントになってきます。
人工芝と天然芝では当然違いますし、また同じ人工芝でも地面の硬さが異なるので選手の疲労度や体の張りの訴えかたもさまざまでした。私は前半戦は1軍、後半戦は2軍に帯同し、そこでのトレーナーの役割の違いを感じました。
1軍では試合が中心。
いかに試合に集中できるよう調整・サポートするかが主眼になります。
2軍では選手育成、故障者のリハビリが中心。
自己管理の大切さを教育していくのが重要な仕事ではないかと感じました。1軍の選手は試合で活躍できるように、2軍の選手は1軍に上がれるように、故障者は1日も早く復帰できるように、それぞれ戦っています。
ものごとがうまく進んでいる時は良いのですが、試合に負けて落ち込んでいたり、リハビリが順調にいかない時などは選手のモチベーションが下がってしまうこともありました。
そんな時トレーナーとしてどう接してゆくべきか考えさせられました。
結局のところ選手個々が気持ちを切り替え立ち直っていくしかないのですが、そのかたわらで自分になにができ、なにをしてゆくべきかを考えさせられました。
たとえば、勝っている試合で中継ぎ投手として登板したが打たれて負けてしまった選手が試合後落ち込みながらトレーナー室に来た時のことですが、私は彼に対して意識して大きな声で「お疲れさん」と声をかけるようにしていました。
今ふり返ってみると選手1人1人に違った声のかけかたがあったのかもしれないし、今後もっと良い方法が見つかるかもしれません。
それは今後の課題であり、またトレーナーとしての醍醐味ではないかとも思っています。
私は高校で選手としての限界を感じ、それでも野球に携わりたいと思いこの業界の門を叩きました。
今思えば、選手が、そして1人の人間が前向きにがんばっている姿を応援し、なんらかのサポートをしていきたいと思い、トレーナーという職業を選んだのではないかと思います。
自分なりの理想のトレーナーを模索し、それに一歩でも近づいていきたいと思います。
また、プロ野球の中でも超一流といわれる選手はひと握りであり、その超一流と接して肌で感じたことが私にとって貴重な財産となりました。
私も彼らに負けないようプロの中の超一流を目指して日々精進していきたいと思います。
ダイナトロン
アメリカ製で干渉低周波と超音波が1台にまとまっているものです。
干渉低周波はパッド式になっており、アイシングやホットパックも同時に行えるようようになっています。
機能はほかにも多々ありました。
爪のケアグッズ
ピッチャーは球に回転をかけるために爪を伸ばしており、爪が割れることもよくあります。
そんなときはシルクでコーティングしたりネイルで固めたりします。
当番前のピッチャーがトレーナー室でつねに手入れをしていました。スポーツバーム
オイル状で患部を温めたりします。
組み合わせにより温度調節をおこない、選手によって好みがあったり、季節により組み合わせを変えたりしていました。
トレーニング場です。
グラウンドです。